充電器

EV導入で電気代が跳ね上がる!?知らないと損する「デマンド値」のワナと賢い充電戦略

電気自動車(EV)の普及が加速する中、EV導入を検討している企業や事業者にとって、電気料金の変動は大きな懸念事項の一つではないでしょうか。特に、複数台のEVを同時に充電する場合、「知らないと危ない電気料金のワナ」が潜んでいます。このワナを理解し、適切な対策を講じなければ、予想外のコスト増に繋がりかねません。

本記事では、EVの同時充電が電気料金に与える影響、特に「デマンド値」という概念の重要性、そしてそのリスクを回避し、賢くEVを運用するためのエネルギーマネジメントシステム(EMS)の必要性について詳しく解説します。 —

1. 知っておきたい電気契約の基本と「デマンド値」の仕組み

EV充電による電気料金への影響を理解する上で、まず知っておくべきなのが、電気契約の種類と電気料金の仕組みです。

1-1. 電気契約の種類:低圧・高圧・特別高圧

日本の電気契約は、契約電力の値によって大きく以下の3種類に分けられます。

  • 低圧:50kW未満
    • 小規模な店舗や事務所、一般家庭などが該当します。
    • 基本料金は設備容量やブレーカー容量で決まることが多いです。
  • 高圧:50kWから2000kW未満
    • 中規模の工場やオフィスビル、商業施設などが該当します。
  • 特別高圧:2000kW超
    • 大規模な工場や鉄道、大規模商業施設などが該当します。

高圧および特別高圧契約の場合、電気料金の基本料金は、過去1年間の最大需要電力、通称「デマンド」によって決定されます。500kW以上の契約では、電力会社との協議によって契約電力値が決定されることもあります。

【重要ポイント】
高圧・特別高圧契約の事業者様にとって、基本料金に直結する「デマンド値」の管理は極めて重要です。

1-2. 電気料金の要!「デマンド値」とは?

「デマンド値」とは、30分間の平均電力使用量を指します。具体的には、ある30分間に使用した電力量(kWh)を0.5時間で割ることで算出されます。

デマンド値(kW) = 30分間の使用電力量(kWh) ÷ 0.5時間

この30分間のデマンド値は毎月計測され、その月の最大デマンド値が採用されます。そして、契約電力は、過去1年間の月別最大デマンド値の中で最も大きかった値が適用されます。

【デマンド値が料金に与える影響のイメージ】

下のグラフは、ある事業所の月間デマンド値の推移を示しています。

例:

  • 1月: 80kW
  • 2月: 85kW
  • 7月: 95kW (この時点で過去1年間の最大デマンドが95kWになる)
  • 8月: 120kW (この時点で過去1年間の最大デマンドが120kWになる)
  • 9月: 100kW (過去1年間の最大デマンドは120kWのまま)

このように、一度でも高いデマンド値を記録すると、その値が最大デマンドとして向こう1年間の契約電力に適用されてしまい、基本料金が高止まりするリスクがあるのです。

基本料金 = 契約電力(kW) × 契約単価

例えば、小規模な事業者であれば、通常の設備構成(照明、空調、冷凍冷蔵庫など)に加えてEV充電器を導入すると、このデマンド値が上昇しやすくなります。弊社の調査によると、小規模事業者のデマンド値は一般的に30kWから60kW程度で推移しています。

2. EV充電器の種類と電力使用量のインパクト

EV充電器は大きく分けて「普通充電器」と「急速充電器」の2種類があり、それぞれ電力使用量とデマンドへの影響が大きく異なります。

2-1. EV充電器の種類と特徴

  • 普通充電器
    • 出力:3kWから6kW
    • 用途:夜間など長時間駐車する際の充電に適しています。
    • 特徴:比較的負荷が小さく、デマンドへの影響は限定的です。
    • 費用目安(工事費込み):
      • 3kWタイプ(1台あたり):20万円~50万円程度
      • 6kWタイプ(1台あたり):100万円~150万円程度
  • 急速充電器
    • 出力:30kWから150kW以上
    • 用途:短時間で急いで充電したい場合に利用します。
    • 特徴:一瞬で大きな電力を消費するため、デマンドが大幅に上がりやすいのが特徴です。
    • 費用目安(1台あたり):700万円~1000万円程度(キュービクル設置等を含む)

2-2. 複数台同時充電がデマンドを急上昇させる!

EV充電器1台あたりの出力も大きいですが、最も注意すべきは複数台のEVを同時に充電するケースです。

例えば、6kWの普通充電器を13台同時に充電した場合、単純計算で約80kWのデマンドがプラスされます。もしこれが50kWの急速充電器2台であれば、100kWものデマンド増加に繋がります。

このように、複数台のEVが同時充電されると、一時的に電力需要が集中し、デマンド値が急上昇します。その結果、

  1. デマンド値の上昇
  2. 基本料金の高騰
  3. TCO(総所有コスト)の悪化

といった悪循環に陥り、予想以上にEV運用コストが増大してしまうリスクがあるのです。

3. EV導入を成功させるカギは「充電タイミングの分散化」

EV導入による電気料金高騰のリスクを回避し、持続可能な運用を実現するためには、「充電タイミングの分散化」が非常に重要です。

3-1. 賢い充電タイミングの例(物流事業者様の場合)

物流事業者様の例で考えると、車両の運行状況に合わせて以下のような充電戦略が考えられます。

  • 帰庫直後(夕方): バッテリー残量の少ない車両から優先的に充電を開始します。
  • 夜間: 建物の全体デマンド(通常の電力使用状況)に応じて、順番に充電を行います。デマンドピークを避けるように充電時間をずらしたり、充電器の出力を制御したりして、デマンドの「山」を作らないよう平準化することが非常に重要です。
  • 朝出発前: 必要に応じて追加充電を行います。
  • 日中: もし拠点に戻る機会があれば、太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用した充電も有効です。

このような充電タイミングの分散化によって、デマンド値の上昇を抑え、電気料金の高騰を防ぐことができます。

3-2. 人手でのデマンド管理は限界!エネルギーマネジメントシステム(EMS)の必要性

しかし、複数台のEVを運用する企業にとって、上記のような充電タイミングの分散化を人の手で管理するのは非常に困難です。車両の運行スケジュール、バッテリー残量、建物のリアルタイムの電力使用状況などを常に把握し、最適な充電計画を立て、実行するには膨大な手間と専門知識が必要となります。

そこで活躍するのが、エネルギーマネジメントシステム(EMS)です。EMSは、これらの複雑な要素を自動で管理し、デマンドの分散化と電気料金の抑制を支援するシステムです。 —

4. EV運用を最適化する「エネルギーマネジメントシステム(EMS)」

当社の提供するEMS「エモ助」および「エモ助ライト」は、EVフリートを導入する企業の電力コスト削減と運用効率向上を強力にサポートします。

4-1. EVフリート向けEMS「エモ助」の機能とメリット

「エモ助」は、車両情報と連携し、未来予測を行うことで、エネルギーコスト抑制だけでなく、ドライバーの電気不安解消や充電の差し忘れ防止にも貢献します。

エモ助の主な4つの特徴

  1. 未来予測機能
    • 電力デマンドの未来予測: お客様の過去の電力使用実績データから、電力デマンドの未来予測を毎日演算し、UI(ユーザーインターフェース)に表示します。これにより、いつデマンドが高まるかを事前に把握し、対策を講じることが可能になります。
    • SOC(バッテリー残量)の未来予測: 各車両の走行計画(走行距離データなど)に基づき、車両ごとのバッテリー残量(SOC)を予測します。これにより、どの車両がどれくらいの充電が必要かを事前に把握できます。
  2. 充電計画の作成・自動予約
    • 電力デマンド予測とSOC予測に基づいて、建物のデマンドに影響を与えない範囲で最適な充電計画を自動で作成します。
    • 例えば、夕方に帰庫した車両の充電開始時間を夜間のデマンドが低い時間帯に自動で設定するなど、ドライバーの手間をかけずに効率的な充電が可能です。
  3. 充電の自動制御
    • 拠点の需要予測で算出したデマンド状況に応じて、充電器の出力を自動で制御します(例:6kW充電器を4kWや2kWに絞るなど)。これにより、デマンドが急上昇するのを防ぎます。
  4. 見える化
    • 各車両のSOCをリアルタイムで「見える化」し、充電状況を一目で把握できます。
    • 電力使用実績や充電データなど、各種実績データを可視化し、分析に役立てることができます。

エモ助による稼働管理

エモ助のUIを通じて、現場の運用負担を軽減する多彩な稼働管理機能を提供します。

  • 車両状態のリアルタイム表示: 各車両の「停止中」「充電中」「走行中」といった状態をリアルタイムで表示します。
  • 電池残量の確認: 各車両のSOC推移をリアルタイムで確認できます。
  • 充電要否の判定: 各車両の走行距離予測に基づき、帰着時のSOC予測を信号機マークで表示し、充電が必要か否かを視覚的に分かりやすく示します。翌日の走行距離が短い車両は充電不要とシステムが判断し、充電対象から外すことも可能です。
  • ガン装着状況の表示: 充電コネクタ(ガン)がしっかり接続されているかを確認できます。
  • 位置情報表示: 車両の位置情報を地図上に表示し、車両の現在地を把握できます。

4-2. エモ助ライト:コストを抑えた導入プラン

「エモ助ライト」は、エモ助から「建物電力予測」と「SOC未来予測」の機能を省くことで、より安価に導入できるプランです。主な機能としては、「充電計画の作成・予約」「充電の自動制御」「見える化」の3点が提供されます。

4-3. EMS導入による具体的な効果事例

あるお客様(EV26台、充電器20台)の導入事例では、システムがない場合、ドライバーが一斉に充電を開始することで最大250万円/年もの電気料金上昇リスクがありました。これは、20台の6kW普通充電器が同時に稼働することで、約120kWのデマンド上昇に繋がる可能性があったためです。

しかし、当社のEMSを導入した結果、この250万円のリスクを0円に抑えることに成功しています。一度デマンドピークが出てしまうと、向こう1年間その高い契約電力が適用されてしまうため、EMSによるデマンド抑制がいかに重要であるかがわかります。

4-4. EMS共通機能:運用効率とコスト管理を強化

エモ助、エモ助ライト共通で、以下の機能も提供しています。

  • QR認証による車両と充電器の紐付け:
    • 充電前にQRコードを読み取ることで、車両単位での充電量を記録できます。
    • これにより、ドライバーごとの充電量、コスト、CO2排出量を正確に把握し、データに基づいた運用改善が可能です。QR認証の他に、カード認証も利用可能です。
  • 詳細なデータレポート:
    • 電力使用実績レポート: 建物の電力デマンド、太陽光発電の自家消費率、EV充電量などを詳細にレポートします(毎月提供)。
    • 車両ごとの生産性レポート: 電費、走行実績、CO2排出量などを車両ごとにレポーティングし、物流事業者様の気になる点を可視化します(車種に限りがあります)。
  • EV車両の状態表示:
    • リアルタイムでの車両位置情報、バッテリー残量推移などを可視化し、管理者様の車両管理をサポートします。

4-5. 連携可能な充電器と施工方法

当社は、EMSだけでなく、様々な種類のEV充電器に対応しています。物流事業者様からの「設置スペースがない」という声に応え、以下のようなユニークな充電器も取り揃えています。

  • 可搬型充電器: 必要な時に持ち運び、使用できるタイプ。
  • 天井吊り型充電器: ガソリンスタンドのように天井から吊り下げて充電するタイプ。省スペースでの設置が可能です。

これらの充電器は当社のEMSと連携可能であり、お客様の設置環境や運用ニーズに合わせた最適なソリューションを提供いたします。

○参考 充電器商材例
・可搬型普通充電器例:カート型6kW充電対応普通充電器 | 株式会社CUBE-LINX
・天吊り型普通充電器 施工例:カーボンニュートラルへのリーディングカンパニーとしてEVを集中配備 CO2排出量とエネルギーコストを低減 | 株式会社CUBE-LINX
・自立型充電器例:日東工業 普通充電器 Pit-2G 通信モデル(JARI認証品) | 株式会社CUBE-LINX
・壁掛け型充電器 施工例:カーボンニュートラル実現に向け大分東センターを基点に配送トラック・営業車のEV集中配備 | 株式会社CUBE-LINX
・急速充電器例:ダイヘン EV用急速充電器 30kW | 株式会社CUBE-LINX

5. どんな企業・事業者にEMSは必要?

では、具体的にEVをどれくらい導入したらエネルギーマネジメントシステムが必要になるのでしょうか?

弊社の経験からすると、EVを5台程度導入するあたりから、EMSの導入を検討することをお勧めします。もちろん、充電タイミングの分散化を人の手で行うことは可能ですが、EV台数が増えるにつれてその限界は明らかになります。デマンド抑制のためには、個々の車両の充電状況だけでなく、建物の全体デマンドを見ながら最適な充電を行う必要があり、これを人の手で継続的に行うのは非常に大きな負担となります。

EMSは、このような複雑なデマンド管理を自動化し、電気料金の高騰リスクを最小限に抑えるための強力なツールです。EVフリートの導入を検討されている企業様、すでに導入されているが電気料金の高騰にお悩みの方は、ぜひ一度EMSの導入をご検討ください。

ご不明な点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

動画でも解説してます!ぜひご覧になってみてください。

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