法人向けEV関連の補助金一覧と受給企業ランキングから紐解く導入戦略
目次
1. 国の補助金一覧
日本におけるEV関連補助金の体系は、一見すると非常に複雑です。補助金の対象は「車両の種別(乗用車・商用車)」や「導入目的・用途」によって細かく分かれており、窓口となる執行団体も異なります。
法人がEVや充電インフラを導入する際、制度の選択を誤ると「本来受けられるはずの補助金がもらえない」「自社が対象にならない補助金窓口を選んでしまい大きな損失を被る」といった実務上のリスクが生じます。まずは、自社がどの制度に該当するのか、日本のEV補助金体系の全体構造を正しく整理しておきましょう。
国のEV関連補助金の全体構造と執行団体
日本における国のEV補助金は、大きく分けると経済産業省と環境省(国土交通省・経済産業省連携)の2つのラインに分かれています。
大まかな切り分けとして、経済産業省が主に「乗用車と充電器単体」を、環境省が主に「商用車(トラック・バス等)と充電設備の一体導入」を管轄していると覚えるとスムーズです。自社が導入する車両の種類によって、申請先の団体(NEV、LEVO、JATA、JCMA)が異なるため、まずは以下の構造マップで最適な窓口を確認することが重要です。

経済産業省が主に「乗用車と充電器単体」を、環境省(国交省・経産省連携)が主に「商用車(トラック・バス・建機)と充電器のセット導入」を管轄しています。自社が導入する車両の種類によって、申請先の団体(NEV、LEVO、JATA、JCMA)が異なるため、まずはこのフローで最適な窓口を確認することが重要です。
実務の鍵:「車両と充電器」をどこでセットにするか
法人のEV導入において、実務上もっとも失敗しやすいのが「充電器の申請窓口」です。
- 一般的な乗用車(社用車)の場合 車両は「NEV(CEV補助金)」、充電器も「NEV(充電インフラ補助金)」と、それぞれ独立して窓口へ申請するのが一般的です。
- トラックやバス(商用車)の場合 車両と充電設備をセットで「LEVO」や「JATA」に一括申請するのが実務上の定石です。
実務担当者へのワンポイントアドバイス:制度の「激変」と「激戦」に注意
① 「最新公募要領」は必ずチェック
EV・充電器の補助金は年度ごとの予算事業のため、年度ごとに申請要件が変わるのが通例です。必ず最新の公募要領を確認してください。最新の公募要領が公開前の場合は、基本的な要件や流れは過去の公募要領で把握し、省庁や執行団体からの公表前の事前情報を収集するのが有効です。
② 特にNEV(経済産業省)の充電設備は激戦
NEVの充電インフラ補助金は、一口に充電器と言っても「経路充電」「目的地充電」「基礎充電」など、導入目的(カテゴリー)によって要件や補助率が細かく分かれています。また、申請期間が短期間な上、抽選(申請単価による当落)の可能性もありますので、注意が必要です。
商用車(トラック等)であれば、この激戦区であるNEVを避け、車両とセットで環境省ライン(LEVO/JATA)に一括申請するのが、確実かつ実務上の定石となっています。
2. ランキングから見える受給企業の傾向と、4つの補助金が持つそれぞれの『性質』
自社に最適な補助金窓口が分かったら、次に気になるのは「実際にどんな企業が、どのようにこの制度を活用しているのか」という実態ではないでしょうか。
本章では、国の主要な4つの補助金(CEV、NEV、LEVO、JATA)について、実際の受給企業ランキングや採択傾向をデータから徹底分析します。
「同業他社はどの規模で動いているのか」「社内を説得するための客観的な裏付けが欲しい」と考えている担当者様にとって、一歩先を行くための実践的なインサイト(知見)をお届けします。
2-1 CEV補助金
【2024年度(令和6年度)実績】
2024年度は、これまでの「リース・ファイナンス系」の上位独占状態から、「特定事業主による自社導入」が上位に食い込んできた点が最大のトピックです。

| 支出先名 | 支出額(単位:千円) |
|---|---|
| 日本郵便 | 3,643,610 |
| 日産フィナンシャルサービス | 2,724,560 |
| 東京電力パワーグリッド | 1,813,650 |
| アストラゼネカ | 1,680,000 |
| 住友三井オートサービス | 1,670,380 |
| 日本カーソリューションズ | 1,511,530 |
| エース・オートリース | 1,464,060 |
| 三菱オートリース | 1,232,970 |
| タイムズモビリティ | 985,900 |
| 武田薬品工業 | 889,500 |
| その他 | 31,285,601 |
実績の特徴
- 法人企業の躍進: 筆頭の日本郵便に加え、東京電力パワーグリッドが上位に入っており、ラストワンマイルやインフラ保守車両の電動化が急速に進んだことが伺えます。
- 製薬大手の大型導入: アストラゼネカや武田薬品工業といった外資・国内製薬大手がランクイン。営業車(MR車両)のカーボンニュートラル化を強力に推進している背景が見て取れます。
- 幅広い支出先: 前年度と比較するとトップ10への支出割合が増えましたが、支出先が7万件超、トップ10以外への支出が64%となっており、小規模台数の個人や法人も含んだ幅広いEV普及を支援しています。
【2023年度(令和5年度)実績】
2023年度は、当初予算分と補正予算分の2つの枠組みで執行されました。この年は、依然として「オートリース・ファイナンス」を通じた導入が市場の大部分を占めていた時期にあたります。

| 支出先名 | 支出額(単位:千円) |
|---|---|
| 住友三井オートサービス | 1,028,310 |
| 日本カーソリューションズ | 658,078 |
| 日産フィナンシャルサービス | 591,305 |
| 三菱自動車ファイナンス | 540,111 |
| エース・オートリース | 495,271 |
| メルセデス・ベンツ・ファイナンス | 451,799 |
| 日本郵便 | 393,376 |
| KINTO | 349,350 |
| オリックス自動車 | 271,450 |
| ジャックスリース | 260,123 |
| その他 | 63,510,513 |

実績の特徴
- リース会社の圧倒的シェア:上位のほとんどをオートリース各社が占めています。法人のEV導入において、補助金申請や残価設定のリスクヘッジをリース会社が担う形が一般的であったことが分かります。
- 「その他」の比率:補正予算分(92.6%)、当初予算分(87.2%)ともに、特定の企業に偏らず、非常に多くの個人ユーザーや中小規模の法人へ広く普及が進んだ年と言えます。
2-2 NEV補助金(充電・充てん設備)
【2024年度(令和6年度)実績】
2024年度は、インフラ大手による大規模投資が継続しつつ、新興勢力の躍進が目立つ結果となりました。

| 支出先名 | 支出額(単位:千円) |
|---|---|
| e-Mobility Power | 9,363,098 |
| Terra Charge | 3,033,199 |
| EV充電インフラ2号 | 2,592,624 |
| EV充電インフラ1号 | 2,104,214 |
| ENEOS | 2,054,272 |
| グリーンキャピタル | 1,651,513 |
| 日本水素ステーションネットワーク | 1,471,465 |
| KIT-CC | 1,144,535 |
| みずほリース | 981,220 |
| 岩谷産業 | 903,667 |
| その他 | 11,072,497 |
実績の特徴
- e-Mobility Powerの圧倒的シェア:支出額が前年度の倍以上に拡大しており、急速充電ネットワークの拡充・更新を強力に推進していることが分かります。
- 新興勢力の台頭:Terra Chargeがエネルギー大手(ENEOS)を抑えて2位にランクインした点は特筆すべき変化です。また、EV充電インフラ1号、2号(エネチェンジのEV充電事業に関連する事業体)、グリーンキャピタル(DMM EV ONと提携)といった充電サービサーに関わる事業者がランクインしており、目的地充電を主戦場とする充電サービスサーによる補助金の取り合いが行われていることがわかります。
- 水素充てん設備:同予算で水素充てん設備も補助対象になるため、日本水素ステーションネットワーク、岩谷産業といった企業がランクインしています。
【2023年度(令和5年度)実績】
2023年度は、インフラ基盤の維持と、水素ステーション整備への集中投資が並行して進んでいた時期です。

| 支出先名 | 支出額(単位:千円) |
|---|---|
| e-Mobility Power | 4,160,460 |
| ENEOS | 1,719,584 |
| KIT-CC | 1,691,246 |
| 日本水素ステーションネットワーク | 1,497,000 |
| JTBビジネストランスフォーム | 1,254,451 |
| 岩谷産業 | 869,000 |
| EV充電インフラ1号 | 681,995 |
| 岩谷コスモ水素ステーション | 651,000 |
| 日本エア・リキード | 609,000 |
| みずほリース | 562,866 |
| その他 | 9,673,495 |
実績の特徴
- 水素インフラへの注力: 日本水素ステーションネットワークや岩谷産業、日本エア・リキードといった、水素関連の事業者が上位10社のうち4枠を占めており、FCEV普及に向けたステーション整備が重点的に行われていたことが伺えます。
- 「その他」比率の高さ: 2024年度と比較して「その他」が41.4%と高く、中小規模の事業所や宿泊施設等における普通充電器の単発設置も多かった時期と言えます。
2-3 LEVO補助金
【2024年度(令和6年度)実績】
2024年度は、商用車メーカー系リースの圧倒的なシェアが続く一方で、大手物流事業者による直接的な大規模導入が加速しました。

| 支出先名 | 支出額(単位:千円) |
|---|---|
| ダイムラー・トラック・ファイナンシャルサービス・アジア | 4,369,556 |
| いすゞリーシングサービス | 3,339,067 |
| MOBILOTS | 2,040,175 |
| 日本郵便 | 1,720,104 |
| 日本カーソリューションズ | 552,632 |
| ヤマトリース | 84,372 |
| 三菱オートリース | 84,080 |
| 芙蓉オートリース | 67,968 |
| オリックス自動車 | 63,391 |
| 住友三井オートサービス | 31,549 |
| その他 | 280,527 |
実績の特徴
- メーカー系リースの独占:三菱ふそう(ダイムラー)、いすゞ、日野(MOBILOTS)といった、商用車メーカー専属の金融・リース会社が上位3位を独占(合計で77%)。リースでのEVトラック販売が主流であることが鮮明です。
- 日本郵便の圧倒的存在感:一般事業会社としては異例の17億円超の支出実績を記録。補助額がトラックに比べて少額な軽EVですが、非常に多くの台数を補助金で導入していると考えられ、同社が国内最大の牽引役となっていることが分かります。
- 支出先数の絞り込み:2023年度と比較し、支出額は増えたものの、支出先数は113件と大幅に減少。これは、一部の大手プレイヤーによる「まとまった台数」の導入にシフトした可能性を示唆しています。
【2023年度(令和5年度)実績】
2023年度は、商用EVの社会実装が本格的に始まり、幅広い事業者へ普及の裾野が広がった年でした。

| 支出先名 | 支出額(単位:千円) |
|---|---|
| ダイムラー・トラック・ファイナンシャルサービス・アジア | 5,003,694 |
| MOBILOTS | 2,431,931 |
| 日本郵便 | 677,054 |
| 日本カーソリューションズ | 349,584 |
| いすゞリーシングサービス | 312,028 |
| ASFアセットマネジメント | 151,960 |
| オリックス自動車 | 98,321 |
| 三菱オートリース | 85,892 |
| SBSファイナンス | 41,883 |
| JA三井リースオート | 34,800 |
| その他 | 207,416 |
実績の特徴
- 普及の裾野の広さ: 支出先数が2,525件と非常に多く、数台単位での買い切りなど試験的導入が全国で盛んに行われていた時期と言えます。
- 新興プレイヤーの参入: ASFアセットマネジメントなど、新興EVメーカーに関わる企業のランクインが見られ、商用EV市場の選択肢が多様化し始めた時期でもありました。
2-4 JATA補助金
【2024年度(令和6年度)実績】
2024年度は、これまでの「タクシーのみ」から、「タクシー+バス」が対象になりました。補助額の差もあり、「路線バスのEV化」へと支給先が大幅に変化しました。

| 支出先名 | 支出額(単位:千円) |
|---|---|
| MOBILOTS | 1,025,050 |
| 大阪市高速電気軌道 | 915,600 |
| 西日本鉄道 | 609,888 |
| 川崎鶴見臨港バス | 148,959 |
| 伊予鉄バス | 136,949 |
| 南海バス | 131,831 |
| みずほリース | 118,456 |
| 京浜急行バス | 112,353 |
| 西東京バス | 107,760 |
| 神奈川中央交通 | 104,227 |
| その他 | 1,236,734 |
実績の特徴
- 大手バス事業者のランクイン: 大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)や西日本鉄道といった、都市圏の基幹交通を担う事業者がトップ層に名を連ねています。
- 全国的なバス電動化の波: 伊予鉄バスや南海バスなど、地方都市でも路線バスのEV化が着実に進展しています。
- メーカー系リースの活用: 1位のMOBILOTS(日野自動車系)が大型バス導入の強力なサポート役として機能しています。
【2023年度(令和5年度)実績】
2023年度は、現在の「バス・タクシー統合枠」となる前段階にあり、オートリースおよびタクシー会社が主な支出先でした。

| 支出先名 | 支出額(単位:千円) |
|---|---|
| MOBILOTS | 140,071 |
| 住友三井オートサービス | 100,954 |
| 三菱オートリース | 44,780 |
| リコーリース | 10,500 |
| 芙蓉オートリース | 8,355 |
| トヨタモビリティサービス | 8,178 |
| 板子運送有限会社 | 2,388 |
| 陽東タクシー | 2,388 |
| 山和タクシー有限会社 | 1,672 |
| 甲州タクシー | 1,158 |
| その他 | 18,352 |
実績の特徴
- タクシー事業者の個別導入:支出先数26件とプレイヤーが非常に限られています。下位にはタクシー事業者が並んでおり、地域における「試験的な1台」の導入も行われていたことが伺えます。
- リース活用による小規模普及:上位はオートリース各社ですが、1社あたりの支出額は2024年度のバス導入と比較して10分の1以下の規模に留まっています。
3. まとめ:補助金を活用したEV導入に向けて、いま担当者がすべきこと
本記事では、複雑な日本のEV・充電補助金の全体構造から、各補助金の実際の受給企業ランキング・採択傾向までを解説してきました。
ランキングのデータが示す通り、各補助金にはそれぞれの制度特性があり、どのような企業が、どういった目的で活用しているのかという「実態」を把握することは、自社の導入計画を立てる上での重要な指標となります。
補助金申請を確実に成功させるためには、以下の2点が常に実務の鉄則となります。
- 「最新公募要領」の先回りチェック: 毎年春頃の予算切り替わりに伴う要件変更や、申請期間の変更にいち早く対応する。
- 自社に最適な窓口の早期見極め: 車両と充電器を「バラバラに申請する(NEV等)」べきか、「セットで一括申請する(LEVO/JATA等)」べきかを早期に判断し、社内合意を作る。
ぜひ、今回整理した全体構造と最新の受給実績データを社内の導入計画や稟議の客観的な「裏付け」としてご活用いただき、確実でロスのないEV導入を進めてください。
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