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法人向けEV導入担当者必見!電気料金明細の読み解き方とコスト削減の秘訣

法人向けEV導入担当者必見!電気料金明細の読み解き方とコスト削減の秘訣

近年、企業のEV導入が加速しています。環境負荷低減やBCP(事業継続計画)対策など、そのメリットは多岐にわたりますが、EVを自社で充電する場合に必ず直面するのが「電気料金」というランニングコストです。

電気料金明細は一見すると複雑で、どこを見れば良いのか迷ってしまう方も少なくないでしょう。しかし、明細のポイントを理解すれば、EV導入後のコストを正確に把握し、さらには削減につなげることも可能です。

本記事では、EV導入を検討している法人担当者様や、新たにEV関連業務に携わることになったディーラー担当者様向けに、電気料金契約の基本から明細の具体的な見方、そしてEV充電におけるコスト削減のポイントまでを分かりやすく解説します。

電気契約の基本原則:「一需要場所一契約」とは?

まず、電気契約の基本的な原則として「一需要場所一契約」というルールがあります。これは、簡単に言えば「同じ住所や敷地内で複数の電力会社や契約メニューを併用することは基本的にできない」という意味です。

そのため、自社にEV充電器を設置して充電する場合、EVの充電料金は既存の建物全体の電気契約に合算されて請求されます。EV充電専用の別契約になるわけではなく、建物全体の電気使用量の一部として扱われるため、この点を理解しておくことが重要です。

(※特例需要場所など、一部例外もありますが、ここでは割愛します。)

電気料金明細の3つの重要ポイントを徹底解説

お手元に自社の電気料金明細をご用意いただければ、一緒に確認しながら読み進めることでより理解が深まります。電気料金明細で押さえるべきポイントは以下の3つです。

  1. 契約情報
  2. 利用実績
  3. 料金計算

それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。

1. 契約情報:自社の契約プランを確認する

まず、「契約情報」欄で確認したいのは以下の2点です。

(1) 使用場所

複数の拠点を持つ法人では、総務担当者様が複数の建物の明細を管理しているケースもあります。ご自身が担当している建物や拠点の住所と明細に記載されている住所が一致しているか、念のため確認しましょう。

(2) 契約プラン(受電電圧と料金体系)

ここが最も重要なポイントです。明細には、高圧電力プラン高圧季節別時間帯別電力プランなど、契約しているプラン名が記載されています。この契約プランによって、料金体系や単価が大きく異なります。

多くの事業所では、一般家庭よりも高い「受電電圧6,600V」で受電する高圧電力契約を結んでいます。本記事では、この高圧電力契約の例を中心に解説を進めます。自社の契約プランが異なる場合は、各電力会社のウェブサイトなどで詳細を確認してください。

2. 利用実績:EV充電に影響する2つの重要項目

次に「利用実績」欄でチェックすべきは、EV充電のランニングコストに直結する以下の2つの項目です。

(1) 契約電力(kW:キロワット) 下図赤字イメージ

契約電力は「施設で同時に使える最大の電力」を指し、単位は「kW(キロワット)」で表されます。これは、例えるならば「蛇口の太さ」や「水を出す勢い」のようなものです。同時に多くの電力を利用すると、この契約電力が大きくなり、基本料金に影響します。

(2) 使用電力量(kWh:キロワットアワー) 下図青字イメージ

使用電力量は「施設で月に使った電気の総量」を指し、単位は「kWh(キロワットアワー)」で表されます。これは「実際に流れた水の総量」のようなものです。

これらの単位が苦手だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、「kW」と「kWh」はEV充電において常に登場する重要な概念ですので、ここでしっかり理解しておきましょう。

【kWとkWhのイメージ】

  • kW(電力): 「どれくらいの速さで電気を使うか」という瞬間の力や勢い
  • kWh(電力量): 「どれくらいの量の電気を使ったか」という総量

例えば、6kWの出力で電気を1時間使うと6kWhの電力量を消費したことになります。5時間使うと30kWhです。

水やガソリンなどの燃料は「量」だけで料金が計算されがちですが、電気の場合は「電力(kW)」、つまり「どのくらいのスピードで電気を供給したか」という出力が料金計算に大きく影響する点が特徴です。この根本的な違いを理解することが、電気料金を読み解く上で非常に重要になります。

3. 料金計算:明細の内訳と計算式を理解する

電気料金は複雑に見えますが、基本的には「契約電力(kW)」と「使用電力量(kWh)」にそれぞれの単価を掛け合わせて計算されています。大きく分けて、以下の3つの要素で構成されていることが多いです。

  1. 基本料金
  2. 電力量料金
  3. 再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)

それぞれの計算式と内訳を見ていきましょう。

(1) 基本料金

基本料金は、「契約電力(kW)× 基本料金単価」で決まります。同時に使用できる最大の電力(契約電力)が大きいほど、基本料金も高くなります。

(2) 電力量料金

電力量料金は、「使用電力量(kWh)× 電力量料金単価」と「使用電力量(kWh)×燃料費調整単価」の計算で求められます。「燃料費調整単価」は火力発電の燃料価格の変動に応じて毎月変動する単価で、燃料価格が安くなればマイナス、燃料価格が高くなればプラスに働きます。

(3) 再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)

再エネ賦課金は、「使用電力量(kWh)× 再エネ賦課金単価」で決まります。これは、再生可能エネルギー普及のための費用を国民全体で負担する制度であり、1kWhあたり年間固定の単価が設定されています。

これらの要素を合計することで、最終的な電気料金が算出されます。

【料金計算のイメージ】
電気料金 = 基本料金(契約電力 × 基本料金単価)+ 電力量料金(使用電力量 × 電力量料金単価)+ 再エネ賦課金(使用電力量 × 再エネ賦課金単価)

このように、一見複雑に見える電気料金も、契約電力と使用電力量という2つの軸で構成されていると理解すると、明細のどこを見れば良いか明確になります。

EV充電と電気料金への影響、そしてコスト削減のヒント

EV充電器を設置して充電を開始すると、電気使用量が増加します。これは、先述の「使用電力量(kWh)」と「契約電力(kW)」の両方に影響を及ぼします。

  • 使用電力量(kWh)の増加: EV充電による電気の使用量が増えるため、電力量料金が増加します。
  • 契約電力(kW)の増加: EV充電器の出力によっては、同時に使用する電力のピークが上がり、契約電力の引き上げが必要になる場合があります。これにより、基本料金も増加する可能性があります。

では、EV充電コストを抑えるためにはどうすれば良いでしょうか?

コスト削減の2つのアプローチ

1. 使用電力量(kWh)に関するコスト削減

これは主に、EVの電費を良くすることと、電力プランの最適化が挙げられます。

  • EVの電費を良くする: EV自体の効率的な運用(急加速・急ブレーキを避けるなど)により、消費電力量を抑えることが可能です。
  • 最適な電力プランの選択: 電力会社が提供する多様な料金プランの中には、時間帯によって単価が変動するプラン(例:夜間単価が安いプラン)があります。自社のEV充電時間帯に合わせて最適なプランを選択し、単価の安い時間帯に充電を集中させることで、電力量料金を削減できる可能性があります。
  • 最適な配送ルートの検討: 配送ルートを効率化することにより、走行距離や稼働時間などを最小限にすることで必要な電力量が低下します。また、配送ルートを効率化することによりEV台数が減る可能性もあるので一度配送ルートの見える化と整理をしてみるのもよいと思います。

2. 契約電力(kW)に関するコスト削減

これは主に、同時に使用する電力を最適化することが重要になります。

  • 充電タイミングの最適化: 建物全体の電力使用量(負荷)を把握し、EV充電器が稼働することで電力ピークが発生しないよう、他の電力使用量が少ない時間帯に充電を行うなどの工夫が有効です。
  • エネルギーマネジメントシステムの導入: 複数のEV充電器やその他の電力設備を持つ場合、エネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入することで、電力使用状況をリアルタイムで監視し、契約電力が跳ね上がらないよう自動的に充電を制御するといった最適化が可能です。これにより、基本料金の上昇を抑えることができます。
    エネルギマネジメントシステムの効果については別の記事でも解説しておりますので、下記リンクより参照してみてください。

参考コラム:EV導入で電気代が跳ね上がる!?知らないと損する「デマンド値」のワナと賢い充電戦略

まとめ:EV担当者が押さえるべき3つのポイント

EV導入における電気料金の理解は、ランニングコストを最適化し、企業のEV運用を成功させる上で不可欠です。今回の解説で、以下の3つのポイントを理解していただけたでしょうか。

  1. 契約プランを確認する:自社の受電電圧と料金体系を把握し、最適なプランを選定しましょう。
  2. 契約電力(kW)と使用電力量(kWh)を把握する:電気料金の根幹となるこれら2つの数値を明細で確認し、その意味を理解しましょう。
  3. 料金計算の内訳を理解する:基本料金、電力量料金、再エネ賦課金がどのように計算されているのかを知ることで、コスト削減の糸口が見えてきます。

これらのポイントを押さえることで、EV担当者として電気料金明細を自信を持って読み解き、最適なEV運用プランの策定やコストダウン戦略に貢献できるはずです。

ご不明な点や、さらに詳しい情報が必要な場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。貴社のEV導入を全力でサポートいたします。

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