EV導入成功の鍵は「充電時間」!運送業向けEV充電戦略のすべて
【この記事の要点】
- EVの充電時間は、充電器の出力と車両の受け入れ能力によって決まる。
- 計算式はシンプルだが、「充電カーブ」や気温によって実際の時間は変動する。
- 最適なEV運用には、普通充電と急速充電を賢く使い分ける「充電戦略」が不可欠。
- 専門家の知見を活用すれば、貴社の事業に最適な充電インフラ構築が可能になる。
運送業界の皆様、EV化へのシフトはもう避けられません。環境規制やSDGsへの対応、そして不安定な燃料コストへの対策として、電気自動車は未来の経営に欠かせない存在です。
しかし、多くの企業様が共通して抱える最大の懸念、それが「充電時間」ではないでしょうか。「どれくらいで満タンになる?」「待ち時間は発生しない?」といった疑問は、EV導入の決断をためらわせる大きな要因です。
本コラムでは、EV充電サービスの専門家である私たちが、運送会社の皆様の疑問にお答えします。この記事が、貴社のEV化推進の一助となれば幸いです。
目次
1. EV充電の基本:スピードを決める2つの要素とは?
EVの充電時間を正確に理解するためには、まず以下の2つの要素を知る必要があります。
1-1. 充電器の出力(kW)
最も分かりやすい指標は、充電器の出力(kW)です。数字が大きいほど、単位時間あたりに供給される電力量が多く、充電スピードが速くなります。
- 普通充電器: 主に夜間の長時間駐車時に使われ、出力は3kW〜6kW程度です。バッテリーに優しく、コストも安価です。
- 急速充電器: 高速道路のSAや道の駅などに設置されており、30kW、50kW、さらには150kWといった高出力タイプが増えています。短時間での補給を可能にします。
1-2. 車両側の受け入れ能力(受入出力)
充電スピードは、充電器の出力だけで決まるわけではありません。EV車両側には、最大でどれくらいの電力を受け入れられるかという「車両側の受け入れ能力」が存在します。
例えば、50kWの充電器に接続しても、車両の受け入れ能力が40kWまでなら、実際の充電スピードは40kWに制限されてしまいます。せっかく高性能な充電器を導入しても、このミスマッチがあると意味がありません。
私たちはお客様の導入車両に最適な充電器をご提案し、ミスマッチのない効率的な充電環境を構築します。
普通充電器と急速充電器の比較
それぞれの充電器には、用途に応じたメリット・デメリットがあります。以下に主な違いをまとめました。
| 項目 | 普通充電器 | 急速充電器 |
|---|---|---|
| 出力(充電スピード) | 3kW〜6kW程度 (比較的遅い) | 30kW〜150kW以上 (非常に速い) |
| 主な用途 | 営業所での夜間充電 自宅での長時間充電 | 高速道路のSA、道の駅 緊急時の短時間充電 |
| 充電時間目安 | 30kWhのEVを6kWで充電 →約5〜6時間 | 70kWhのEVを50kWで充電 →約1〜1.5時間で80%まで |
| バッテリーへの影響 | 負担が少なく、寿命維持に貢献 | 頻繁な使用は劣化を早める可能性あり |
| 導入コスト | 比較的安価 | 高価 |
| ランニングコスト | 安価(夜間電力プラン利用可) | 高価(電力単価が高い場合が多い) |
| 設置場所 | 営業所、駐車場、自宅 | 商業施設、道の駅、公共施設 |
| メリット | ・コストが安い ・バッテリーに優しい ・計画的な運用が可能 | ・短時間で大幅に充電できる ・外出先での補給に便利 |
| デメリット | ・充電に時間がかかるため、短時間での充電には不向き | ・導入・ランニングコストが高い ・バッテリーへの負担が大きい ・充電効率が変動しやすい |
| 適合する 運送業務 | ラストワンマイル配送 (走行距離が短い業務) | 広域配送、長距離輸送 (走行中に充電が必要な業務) |
2. 充電時間はどう計算する?実際の運用で知っておくべきこと
次に、具体的な充電時間の計算方法と、実際の運用で考慮すべき点を見ていきましょう。
2-1. 充電時間の基本的な計算式
充電時間は、以下のシンプルな式で概算できます。
充電時間(時間) = バッテリー容量(kWh) ÷ 充電器出力(kW)
例: 70kWhのEVトラックを50kWの急速充電器で充電する場合
充電時間 = 70 kWh ÷ 50 kW = 1.4 時間(約1時間24分)
これはあくまで理想的な理論値です。実際の充電時間はこれよりも長くなることがほとんどです。
2-2. 実際の充電時間が長くなる理由「充電カーブ」
実際の充電時間を左右する最大の要因が充電カーブです。これは、バッテリー残量(SOC)が高くなるにつれて、バッテリー保護のために充電スピードが徐々に低下していく現象です。
特にバッテリー残量が80%を超えると、充電効率は著しく落ちます。これは、0%から80%までの充電に比べて、80%から100%までの充電に、より長い時間がかかることを意味します。
2-3. 気温が充電時間に与える影響
バッテリーの温度も充電効率に大きく影響します。
- 冬場の低温時: バッテリーが冷えていると、内部抵抗が増加し、充電スピードが低下します。
- 夏場の高温時: バッテリーが熱くなると、保護のために充電出力が抑制されます。
外気温や走行直後かどうかで充電時間は変動します。季節ごとの変動を考慮した計画が重要です。
3. 【実践】運送業における効率的なEV充電戦略
これまでの知識を踏まえ、運送会社としてどのようにEVの充電戦略を立てるべきか、具体的な戦略をご提案します。
3-1. 普通充電と急速充電の使い分けの原則
最も重要なのは、「夜間(営業所内)での普通充電を基本とし、日中の急速充電は必要最小限に留める」ことです。
- 普通充電のメリット: バッテリーへの負担が少なく寿命維持に貢献し、電気料金単価も安く抑えられます。
- 急速充電の役割: 長距離移動中の充電や、急な運行変更に対応するための「補給」として活用します。特に、「80%充電」を目安にすることで、時間対効果の高い運用が可能です。
3-2. 車両ごとの充電ニーズを想定する
お客様の運行パターンを詳細にヒアリングし、「何を」「どこで」「どのように」充電するかを具体的に計画します。
- 小型バン(ラストワンマイル): 1日の走行距離が短い(100km〜150km)ため、夜間の普通充電器で十分対応可能です。
- 中型トラック(幹線輸送): 長距離走行(200km〜400km)が多いため、夜間の普通充電に加え、運行中の急速充電も必要となります。
4. まとめ:EV導入は充電戦略から始まる
本コラムでは、EV充電の基本から、計算方法、そして効率的な運用戦略までを解説しました。
充電時間の把握と適切な管理は、EV導入の成否を分ける重要な要素です。車両の性能だけでなく、「どのように充電するか」という戦略を事前に立てておくことが、運行コストの最適化や、ドライバー様の負担軽減、さらにはバッテリーの長寿命化にも繋がります。
しかし、充電インフラの導入は、電力契約や補助金申請、最適な機器選定など、多岐にわたる専門知識を必要とします。
貴社のEV化を単なる車両の置き換えで終わらせず、持続可能で高効率な事業へと変革するために、私たち専門家の知見をぜひご活用ください。
貴社の現状に合わせた最適なEV充電ソリューションについて、ぜひ一度ご相談ください。
よくあるご質問(FAQ)
Q: EV充電器は家庭用電源でも使えますか?
A: はい、家庭用コンセントでも充電は可能ですが、充電に非常に時間がかかります。業務利用では、3kW〜6kWの普通充電器の導入を推奨します。
Q: 補助金はどれくらい出ますか?
A: 国や地方自治体により、EV車両や充電設備の導入に対する補助金制度が用意されています。最新情報や申請要件は時期によって変動するため、弊社のような専門家へのご相談をおすすめします。
Q: 営業所の電力容量が足りるか心配です。
A: 多数のEVを同時に充電する場合、営業所の電力契約の見直しや、変電設備の増強が必要になるケースがあります。私たちは電力会社との協議も含め、最適なプランをご提案します。
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